☆ 2001年10月31日発売 ☆

やきものの美と用
加藤誠軌著(内田老鶴圃)



====== 内容紹介 =======

 この本では、200 枚近くのカラー写真からなる口絵を用意しました。「やきもの」の本は無数にありますが、ほとんどは美術や工芸の立場から書いた本です。この本は工学の視点から書いた最初の「やきもの芸術論」で、日本の美の本質に迫ります。
 現代の日本人は世界で一番の「やきもの」好きで、日本列島には陶芸作家が溢れていています。著名な陶芸家の作品とあれば何百万円でも引く手は数多あまたという盛況です。何しろ色刷りの陶芸雑誌が何万部も売れる陶芸天国なのです。日本各地には伝統的な「やきもの」産地が百以上もあって、どこの窯元でも愛好家の列が絶えることがありません。町の陶芸教室は大繁盛はんじょうです。芸大の陶芸科をはじめとする陶芸の専門教育も盛んです。陶芸は日本の伝統工芸のほぼ半分を占めています。
 その反面で大学の工学部では「やきもの」の研究者が皆無になりました。大学や国立研究機関の「やきもの」研究室はすべて先進セラミックスに転進しました。現在の日本ではセラミック材料の工学教育は金属材料や高分子材料の工学教育の一割にも達していません。セラミック材料の専門家は非常に少ないのです。古い「やきもの」と先進セラミックスの両方に通じた人は工学部にはいなくなりました。現在では「やきもの」は芸大の守備範囲で、工学の対象ではありません。これはなぜでしょうか?
 セラミックスの国宝や重要文化財がいくつあるかをご存知ですか? 本書をお読みになれば異常に少ないことがお分かりでしょう。これは何故でしょうか? 「やきもの」に対する日本人の美意識は外国人から見るとかなり異質なようです。1563 年に来日したイエズス会司祭のフロイスは報告書の中で「日本人はひびが入った古い陶器や土器を宝物とする」と書いていますが、それは現在まで続いています。これは何故でしょうか?道具は役に立つことが肝心です。何の役にも立たない道具は無用の長物です。しかし美しい道具は人の心を和なごませます。この國の人は昔から「やきもの」の美を愛し続けてきました。日本人の美の基準が外国の人達と違うのは何故でしょうか?
 美術評論家はこれらの疑問に何も答えてくれません。ぜひ読者各位のご意見をお聞かせ下さい。

A5版・260ページ・本体価格3600円(税抜)

====== 目 次 =======
1 「やきもの」の基礎知識
 1.1 「やきもの」の概念と用語
 1.2 「やきもの」の種類と性質
 1.3 「やきもの」の原料
 1.4 「やきもの」の製造技術
   1.4.1「やきもの」の成形
   1.4.2「やきもの」の加飾
   1.4.3「やきもの」の焼成
 1.5 窯業の発達

2 「やきもの」の美
 2.1 日本人の美意識
 2.2 国宝と美
 2.3 喫茶と茶陶
 2.4 陶芸天国
 2.5 「やきもの」の真贋
3 世界の「やきもの」
 3.1 「やきもの」の発明
 3.2 西方世界の「やきもの」
 3.3 東洋の「やきもの」
 3.4 日本の「やきもの」
 3.5 ガラス工芸と七宝

4 天然セラミックス
 4.1 岩石と鉱物
 4.2 古代文明と石材
 4.3 石材の種類
 4.4 宝飾品

5 先進セラミックス
 5.1 先進セラミックスとは
 5.2 先進セラミックスの特徴
 5.3 電子セラミックス
 5.4 先進セラミックスの将来


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